コラム ― 釣行記

岩手釣行記 (2012年4月)

[2012.07.30 UP]

釣りを仕事にしたつもりだが、今年はなかなか釣りに出かけられない。今のところ、3月の山形、4月の岩手の2回だけ。まあ、まだ仕事の方も軌道に乗っていないし、プライベートの事情もあるから、それは仕方ないけれど。

山形は釣行記にするほどの成果はなかったが、岩手は、絶好調とまでいかないまでも、とりあえずサクラマスが2本釣れたし、まずまず充実していた。

朝8時に自宅のある茨城を出発して、東北自動車道で一路、北を目指す。途中、サービスエリアで、朝飯を食べる。朝食は、蕎麦に限る。早めに岩手に到着したいし、ゆっくり休憩しているわけにはいかないが、こういう時間も楽しみの一つだ。お腹が満たされたところで、再び北上を開始する。この日も釣りをしたいから、どこか気持ちは焦っているが、安全運転をこころがけて、ハンドルを握る。トイレ休憩を挟みながら、8時間ほどで岩手県に入る。ところが、高速を下りる場所を間違えて、迷いに迷う。データが古いカーナビの誘導も怪しい。何度か行きつ戻りつするうちに、ようやく見覚えある風景に出会って、ホッとする。目指す川周辺に到着したのは、午後3時を過ぎていたが、あたりはまだ明るいし、釣りはできる。

さっそく、川沿いの道路を走り、偵察を行う。昨年、初めてきたこの川。サクラマスを何本も釣り上げて、いいイメージのある川だ。しかし、地元の人との約束もあるので、詳しい場所は明かせない。水の美しい川ということだけ、記しておこう。上流から下流まで車を走らせ、川を観察する。昨年、何本ものサクラを釣ったポイントには、車が何台かあった。やはり、ここが有望なのだろう。そのポイントは、開けた瀬になっていて、川底に大石がいくつも点在する、一級ポイントなのだが、そこはとりあえずスルーして、また上流に戻る。

川べりに立ち、状況を眺める。今年は、昨年に比べると水量が多い。少なくても良くないが、今年は少し多いように感じた。上流は水の流れが速い。ダメかなと思いつつも、キャストしてみる。何度か繰り返して、様子を見るが、反応は薄そうだ。

少し下流に移動すると、先客がいたので、状況を聞いてみるが、やはり釣れてはいないようだ。

こうして、何か所か場所を変える。やはり上流は、流れが速過ぎる。魚はいても、流れが速いと、一息つく暇もないから、投げたルアーにも食いついてこない。

結局、瀬になっている一級ポイントに移動。しかし、日曜日ということもあり、朝から既に多くの人が訪れていて、魚も警戒している。そう簡単には釣れないとわかってはいたが、とりあえず釣り人に話を聞いてみる。やはり午後は不調のようだ。それでも、せっかく来たのだから、日が暮れるまでやるつもりで、川に向かう。そんな中、一人の釣り人に動きがあった。バタバタと動く魚が見える。サクラを釣り上げたようだ。それを横目で見ながら、ひたすら投げ続けるが、アタリなし。周囲が暗くなってきたので、明日に思いを馳せながら、納竿とする。

宿泊は、道の駅で車中泊だ。風呂は、道の駅から車で10分もかからない所にある、温泉ホテル。普段は、シャワーだけで済ませるのだが、旅先では湯船で足を伸ばして、ゆっくりと温泉に浸かる。疲れが湯に溶けだしていくようだ。帰り道にコンビニに寄って、食糧を調達する。発泡酒やハイボール、おつまみと、翌日の朝ご飯用に、おにぎりも購入する。道の駅に到着してからが、しばし、くつろぎの時間だ。今日の川の様子を思い返しながら、明日の作戦を考える。翌日が月曜日ということもあって、駐車場には車も少なく静かだった。アルコールを片手に、静寂の中で、考えごとをしながら過ごす時間が好きだ。だが、翌日の釣りに響いては本末転倒。若い頃なら、もっと無理もきいたが、40も後半になると、体を労わらないと長続きはしない。釣りは体力勝負だ。アルコールに未練を残しながらも、早めに切り上げる。昨年、サクラマスを釣り上げた、あのポイントを攻めていこうと考えながら、眠りについた。

翌日は、朝4時に起床する。缶コーヒーを飲み、手早く身支度を整え、昨日立てた作戦通りのポイントに向かう。この日は、朝から夕方まで釣りを満喫できる。体中に力がみなぎってきた。ポイントに到着して、川の様子をながめながら、合いそうなルアーを選んで、釣り場に向かった。既に5時近かった。向こう岸に届くように、何度も投げる。

投げ続けて、1時間くらいたった頃、アタリが来た。素早く合わせる。まずまずの手応えだ。

間違いなくサクラマスだろう。細心の注意を払いながら、引き寄せる。川面に姿を現したのは、間違いなくサクラマス。今年初めて顔を見せてくれたサクラだ。やはり嬉しい。

再び、竿を振り続ける。昨年知り合った、地元の釣り人が挨拶に来た。俺の釣ったサクラマスに、羨ましそうに視線を送った。しばし、雑談と情報交換をし、旧交を温める。

2匹目を狙って、釣りを再開。向こう岸に、時折、跳ねる魚の姿が見える。流木が引っかかっているあたりを狙って、キャストする。

1匹目が釣れてから2時間くらいたった頃、ふいにアタリが来た。1本目と大きさの感触が似ていた。必死に針から逃げようとするマスを、ジワジワとこちらに引き寄せ、ネットに収める。計測すると、釣り上げた2本とも、56センチ前後だった。その後も、続けてアタリが来た。すかさず合わせるが、反応が軽い。釣り上げてみると、30センチ前後のイワナだった。写真だけ撮って、こちらは川にリリースした。

イワナを川に戻したところで、一息入れる。魚を釣り上げた後は、おにぎりも美味しく感じる。その後、コンビニに行き、氷を購入。持参した発砲スチロールに、その氷を敷き詰め、2本のマスを入れる。それを世話になった知人に送るつもりだったが、発砲スチロールがクール宅急便の規格外とのことで、仕方なく持ち帰ることとなった。

午後からは、場所を移動し、何か所かのポイントと思える場所を回る。竿を持って、川べりまで降りてはみるが、ピンと来る場所がない。途中ポツポツと落ちてきた雨も、夕方が近くなるにつれ、本降りになってきたので、撤収することにした。携帯電話で天気予報をチェックすると、夜から翌日にかけて雨が降ることになっている。釣り最終日は、川の水が増えていて、厳しいかもしれない。

お風呂に入るために、温泉ホテルに向かった頃には、かなり雨足が強くなっていた。この日も、風呂上りにコンビニで食糧&アルコールを調達。雨音を聞きながら、つかの間のくつろぎ時間を楽しんだ後に、眠りにつく。

いよいよ岩手も最終日。既に雨は止んでいた。夕方6時までには、茨城に帰りつきたいから、釣りは午前中で切り上げる予定だ。けれども、雨で川がどうなっているか気がかりだ。車を走らせ、昨日、2匹のサクラを釣り上げたポイントに乗り込む。先客が来ていた。川がかなり増水している。これはダメかもしれない。川の様子を見て、引き返す人もいた。それでも、目の前に川があれば、釣りをせずにはいられない。テキパキと準備を整え、川辺に降りて行った。少しずつ場所を移しながら、キャストしてみるが、反応はない。いつも水の中の魚を想像しながら、川に向かうが、この日は、魚の姿をイメージすることはできなかった。経験上、こんな時は、いくら粘ってもダメだ。1時間ちょっとで、辞めると決断した。

午前中、ポッカリと時間が空いた。せっかくだから、少し足を延ばして、龍泉洞に寄ってみる。

日本三大鍾乳洞のひとつだという。入場料を払い、中に入った途端、ヒンヤリとした空気に包まれた。夏なら、避暑にちょうどいいかもしれない。入り口から進んですぐ、息を飲む。通路の下の青い水に目を奪われる。神秘的なブルーだ。歩き進めていくと、地底湖がある。第一地底湖は水深35m。第二地底湖は水深38m。第三地底湖に至っては、98mもある。洞内には、鍾乳石に、ブルーの水をたたえた湖。水が音を立てて流れている場所もあった。洞から出てきて、改めて外観を眺める。龍泉洞の真上にある山は、宇霊羅(うれいら)山。そして、この山の下に、神秘的な空間があるとは想像がつかない。宇霊羅(うれいら)という響きが変わっていたので、調べてみると、アイヌ語である可能性が高いようだ。その昔、東北地方にもアイヌの人々が暮らしていたらしく、東北各地には、アイヌ語由来と思われる地名もいくつか残っていると言われている。宇霊羅もその一つなのかもしれない。アイヌの血を引いている俺にとって、身近に感じる山となった。

宇霊羅山に見送られ、ここからはひたすら茨城に向かって、車を走らせる。カーブを曲がるたびに、サクラマスの入った発砲スチロールの中の氷がザーッと音を立てる。氷もだいぶ解けてきたようだ。帰り着くまで、大丈夫だとは思うが、少し気になった。

岩手から宮城、福島と抜けて、茨城県に戻ってきたのは、夕方5時は回っていた。だいたい予定通りだ。2泊3日の岩手釣行も、これで幕を閉じる。楽しい時間はあっという間に過ぎるものだ。でも充実していた。次はどこに行こうか。もう一度、岩手か、それとも洞爺湖解禁日か、それとも・・・!?

Tackle Data.(使用タックル)
  • ロッド  フェンウィック・ワールドクラス・スーパーフユーチョ
  • リール  カーディナル44
  • ライン  バリバスゲーム14LB
  • ルアー  スミス・Dコンタクト85

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