コラム ― 釣行記

北海道釣行記 (2012年9月)

[2012.11.03 UP]

《 北海道に上陸 》

9月1日、茨城県の大洗港からフェリー「さんふらわあ さっぽろ」に乗り込む。昨年は、何度も大洗―苫小牧間を往復したが、今年は初のフェリーだ。目的は釣りと、ネットショップで扱う商品探しだ。

「北海道に上陸」 写真1

大洗港を18時30分に出航し、翌日の13時半過ぎに苫小牧港に到着。およそ19時間の船旅を終え、日高方面を目指して車を走らせる。途中、静内(新ひだか町)の釣り具屋をのぞき、熊よけの鈴を購入。小腹がすいたので、セイコーマート(北海道・札幌市に本社のあるコンビニ)のホットシェフでおにぎりを買う。ホットシェフは、お店で作っている温かいメニューのことだが、おにぎりは、具も何種類かあり、本当においしい。他に、カツ丼やフライドチキン、フライドポテトがある。おすすめだ。

静内を出発して、天馬街道を抜け、十勝方面へと進む。暗くなってきたので、友人から教えてもらった大樹町にある晩成温泉をナビで検索。導かれるままに、民家も少ない田舎道を走り、高台にある温泉に到着した。明るい時間帯に入ると、浴室から太平洋を眺められるらしいが、日が暮れてしまって、見えなかったのが残念だ。ちなみに、入浴料は500円。

晩成温泉を後にして、音別に向けてひた走る。音別の市街地に到着したのは、20時を回った頃だろうか。音別に来ると必ず寄る、炉辺焼きの店「どんころ」は、日曜日で休みだ。音別に1件だけあるコンビニ、セイコーマートで、夕食を買う。結局、昼も夜もセイコーマートとなった。

《 苦戦の音別 》

翌朝は、朝4時半起床。霧雨が降っていた。身支度を整え、釣り場の偵察に出る。下流から上流に向けて、橋の上から順番に見て回るが、全体的に川の水が少なすぎる。付近で釣りをしている人からも情報収集するが、みんな冴えない表情で首を振り、手応えある反応はない。

「苦戦の音別」 写真1

やや上流の橋の上から河原を見下ろすと、何やら動いている。腰を曲げて人が歩いているのかと思いきや、2羽の丹頂鶴だった。

「苦戦の音別」 写真2

6時50分頃、中流域のとあるポイントで釣りを開始する。これまでの経験上、渇水気味の時でも、以前の流れが変わってさえいなければ、この場所にはある程度の水量があり、そういう所にアメマスが隠れているという読みがあったからだ。水たまりっぽい所には、都市部ではほとんど見ることのないアメンボが泳いでいた。

「苦戦の音別」 写真3

釣り開始から30分くらいたった頃、アタリがあったが、自分から3、4m離れたところで、バラす。小型のアメマスだった。対岸のブッシュの下に、アメマスが群れで潜んでいるのはわかっていた。

「苦戦の音別」 写真4

だが一向に出てくる気配がないので、少しずつ上流に移動する。

ムキ出しになっている岩肌のそばのポイントが良さそうだったので、キャストしてみた。

「苦戦の音別」 写真5

何回か投げるうちに、ヒット。やった!そう思ったのも束の間、何となくその感触は、アメマスではないような気がした。格闘の末に引き寄せると、サクラマスだった。北海道の河川では、鮭、サクラマス、カラフトマスは、通年、禁漁なので、手早くリリース。それから5分もしないうちに、またヒット。先ほどのサクラよりもズッシリと重たい。今度は鮭だった。サクラに鮭と、ご法度魚ばかりかかる。参ったなあと、すぐさま川に戻す。その後も続いてアタリが来たが、途中でバレた。これも、サクラだった。

サクラマスや鮭がヒットしたのは、7時30分過ぎ。しかし、本命のアメマスは反応がない。9時少し前に、車に乗り込み、下流へ。川を観察すると、アメマスがたくさんいるのが目に入ってきた。これは良いぞと、キャストする。

「苦戦の音別」 写真6

何度目かに当たりがあったが、うまく合わせられず。ルアーを追ってくる小型のアメもいたが、プイッと途中で方向転換されてしまう。これは苦戦しそうだ。木に引っ掛かったルアーを取りに水をかきわけ、向こう岸近くまで行った時に、ブッシュ下にごっそりとアメマスが身を潜めているのを発見。70センチ級の大型もいたので、そのそばに何度もキャストしてみたが、全く口を使わない。結局、一度のアタリも来ないまま、釣況を聞きにきた釣り人にこの場所を譲り、再び、徒歩で上流へ。

そこでも魚影は確認したが、狙いづらいポイントだ。小さいアメがルアーを追ってくるだけで、やはりここでもアタリなし。川を渡って、もう少しだけ上流へ歩を進める。そこで数回、キャストしてみるが、やはりダメだ。まるで反応がない。水量が少なく、水も澄んでいる。これでは、魚から人間の気配が丸わかりだ。

今度は、音別川河口付近に行ってみる。時間はお昼を回っていた。釣り人から情報を収集すると、鮭やカラフトマスはたくさんいるが、アメマスはやはり難しそうだ。浜辺で、とりあえず狙ってみることにした。

「苦戦の音別」 写真7

打ち寄せる波が、時折、腰のあたりまでやって来る。盛り上がる波の中に鮭の姿はあるものの、アメマスは確認できない。13時過ぎに、河口上流に場所を移した。

「苦戦の音別」 写真8

アメマスの群れが、泳いでいるのが見えた。ほのかな期待を胸にキャストすると、アタリがあった。しかしうまく合わせられず。2、3分後に、再びヒット!逃れようとして、魚が跳ねまわる。力も強い。また鮭だ。引き寄せて、すぐにリリース。

その後は、一向に反応なく、最後は河口付近に移動するも、そこもダメ。明るいうちに、次の目的地・知床に向けて出発したかったので、14時過ぎに撤収した。北海道には、まだ1週間弱いる予定だし、その間に雨が降ることを祈りながら音別を後にした。

知床まで行き着くのは難しいので、入浴施設を探しながら車を走らせる。ナビの画面に、尾岱沼温泉という文字を見つける。近辺を探してみると「野付温泉浜の湯」という名前の浴場があった。

「苦戦の音別」 写真9

建物も味わい深く、風情ある湯だった。入浴料は、大人420円也。

温泉を後にして、標津町に入る。既にあたりは暗い。ガソリンスタンドで給油し、車中泊ができる場所と、食事処を教えてもらう。しべつ「海の公園」に車を置いて、徒歩で「郷土料理 武田」ヘ。小上がりでゆっくりと味わった、さんまの刺身が甘くて絶品だった。

《 知床・ウトロ―登別―再びウトロ 》

翌火曜日は、標津町から羅臼に移動し、見つけたコインランドリーで洗濯。終わるまでの間に、「道の駅 知床・らうす」に寄る。朝食を食べた直後だったので、トイレで歯磨きをしていたら、掃除のおばさんに「ここでは洗面と歯磨きはダメなんですよ」と注意された。これまで、あちこちの道の駅に宿泊させてもらったが、歯磨きで注意されたのは初めてだ。道の駅は車中泊ができることになっているのに、洗顔&歯磨きができない道の駅というのは、何だかおかしい。羅臼の道の駅で車中泊した人は、どこで歯磨きしたらよいのだろうか?何かトラブルがあったのかもしれないけれど、ふと疑問に思った。

コインランドリーで洗濯物を回収し、知床横断道路を通ってウトロに向かう。カルペという土産物店で、鹿角や鹿角で作られたペーパーナイフ等を購入。隣にある温泉民宿旅館「酋長の家」の売店で、アイヌ模様が彫刻されたマキリを見せてもらった。アイヌ模様は、美しいし、現代にも通じる。アイヌ模様をほどこしたキャップを売店で買い求めた。

店を出て、近くのウトロ漁港をのぞく。河口付近の橋の下には、カラフトマスが何匹もいる。ここで竿を出してみることに決めた。

「知床・ウトロ―登別―再びウトロ」 写真1

しかし、ここでもまるで反応がない。数人いた先客にも、ほとんど動きが見られない。日も暮れてきたし、そろそろ引き上げようかと思っていたところ、初老の男性に話しかけられる。聞けば、日高町(旧・門別町)在住とのこと。僕は隣町の新冠町出身なので、すっかり盛り上がってしまった。さらに、僕の以前の職場の上司と、偶然釣り場で一緒になったというエピソードまで飛び出してきて、驚く。世の中狭い。

翌日、登別にて所用があったので、夕方6時くらいにウトロを出発。ナビで検索すると、旭川を経由し、高速道路を使って登別入りする方が近いようだ。網走、北見を抜け、旭川方面に車を走らせる。石北峠を越えて、層雲峡を抜け、旭川着。市内で見つけた銭湯で湯に浸かり、焼き肉を食べた後に、「道の駅 あさひかわ」で車中泊。眠りについたのは、午前0時を回っていた。

9月5日、水曜日の朝の目覚めは、やや気だるかった。何とか起きて、道の駅を出る。すぐには高速に乗らずに、神居古潭に寄る。吊り橋の上から、石狩川の流れを見下ろす。川のところどころには、岩が顔を出し、流れも急だ。

「知床・ウトロ―登別―再びウトロ」 写真2

その昔、舟が交通手段だった頃は、難所と言われていたのもわかる気がした。

神居古潭を後にし、途中で高速に乗って、登別に到着したのはお昼前。所要を済ませて、登別を出発したのは、午後2時頃。そこから再び、知床方面を目指す。しかし、登別から知床までは、かなりの距離だ。途中、十勝の本別町にある「道の駅 ステラほんべつ」で車中泊。ここは、2006年4月に鉄道が廃止される前まで、本別駅があった場所だそうだ。

《 再びウトロ 》

早朝に道の駅を出発して、知床へ向かう途中、チミケップ湖の表示を見つけたので、寄り道をしてみた。チミケップホテルという、こじんまりした綺麗なホテルと、静かな湖面。

「再びウトロ」 写真1

ホテルの外で飼われている犬2匹が、のんびりしていて、心がなごんだ。ちなみに、チミケップ湖は、網走郡津別町にある。

再びウトロに到着したのは、午前中。一昨日のリベンジとばかりに、10時半には漁港で竿を出し、カラフトマスを狙う。橋の下やガードレールのある対岸には魚がいるようだが、僕が陣取っていた海を背にして左側は、気配を感じず。何より、9月の北海道、しかも地の果て、知床だというのに、日射しが強いし、暑い!半袖から出た二の腕が、ジリジリと焼ける。

「再びウトロ」 写真2

日が陰ってきた頃、また釣り好きの中年男性に話しかけられる。気が付くと、僕の後ろで、4人のおやじたちが釣り談義。4人が皆、知り合いというわけではないのに、それぞれの釣り自慢で盛り上がっている。途中で釣りに集中できなくなり、話に加わってしまった。僕とは釣りのスタイルは違うけれども、皆、釣りをこよなく愛しているというのが伝わってきた。

結局、この日も釣果なし。「夕陽台の湯」(一般500円)で、温泉につかり、「食事処 太助」で海の幸を堪能する。味はさることながら、マスターやおかみさん、お店の常連客との会話が楽しかった。旅の楽しみは、出会いにもある。

その夜は「道の駅 うとろ・シリエトク」で車中泊。「太助」で、道の駅もヒグマの散歩道だと聞いて、真夜中、トイレに行きたくなったらどうしようなどと思いながら、眠りにつく。

朝、3時台に起床し、ウトロ漁港に4時過ぎに移動。霧雨が降っていて、久しぶりに、空気がひんやりとしている。漁港には、他の車が既に来ていた。考えることは、皆同じ。早朝が勝負と張り切ったが、待てど暮らせどアタリが来ない。仕方ないので、対岸のガードレール側に移動してみると、魚影がよく見える。ここで竿を出してみることにした。

「再びウトロ」 写真3

しかし、時折、群れになってカラフトマスが通るのに、投げたルアーはことごとくマスたちに無視される。漁港の河口付近に、わりと長くいる魚たちなのだろう。人間のやることを、学習し尽くして、ルアーには見向きもしないようだ。ところが、連れの投げたルアーにヒットしてしまった。昨日、漁港で会った釣り好きの1人からもらったタコベイトを試しに付けたルアーが効いたようだ。しかし、カラフトマスをすくい上げたところで、タモ網の柄がパキンと音を立てて折れてしまった。僕は釣れないし、網の柄は折れるしで、散々だ。仕方ないので、斜里町の市街地の釣り具店に、もっとしっかりしたタモ網を買いに走った。

ウトロに戻ってきて、コインランドリーで、この釣行2回目の洗濯。その間、道の駅で、世話になった人へのお土産を買う。

午後2時半頃から、懲りずにまた漁港で竿を出す。河口付近にたまっているマスを狙うが、やはり学習しているようで、ルアーに口をつけてくれない。10匹ほどの群れも、時折、見かけたが、人間慣れした同じ群れが回遊しているような感じだ。もう一度、音別に挑戦したいし、そのためには早めに移動を開始しておいた方がいいので、4時半には撤収して、ウトロを後にした。せっかく購入したタモ網は、出番がないまま、むなしく車中に収まった。来年は時期を考えて、また来よう。

道中、美しい夕日に感動し、思わず写真を撮る。

「再びウトロ」 写真4

「再びウトロ」 写真5

知床峠を通って、羅臼を抜けて、4日前にも利用した「野付温泉浜の湯」で湯に浸かって一休みする。さらに車を走らせ、厚岸の「道の駅 厚岸グルメパーク」で車中泊した。

《 音別川―楽古川 》

翌9月15日の土曜日は、音別に向かう前に、白糠町の茶路川に寄る。ここは、8月21日から10月31日までの間、「サケマス漁獲調査」に参加するという形で、利用券を購入して、サケマス類を釣ることができる。土曜日ということもあり、たくさんの釣り人がいた。自分好みの釣りのスタイルでできそうになかったので、見学のみで茶路を後にし、音別へ。

音別川の河口付近で、埼玉から来た釣り人としばし情報交換。音別の後、知床方面へ行くという。釣り開始は午前9時頃。魚影は見えたが、1回アタリがあったのみで、不調だ。

場所を変えようと思っていると、また別の釣り人が。今度も埼玉からやってきた人だった。フライ専門の人で、北海道のあちこちの河川にかなり詳しかった。

10時40分頃に、河口付近を諦め、下流から上流に向かって車を走らせて、何か所かの橋の上から、川の状況を確認する。11時過ぎに、そのうちの一か所で釣りを再開してみるが、可能性が薄そうなので、すぐに引き上げた。

何とか本命のアメマスを釣りたいという強い思いから、車を広尾方面へ向けた。到着したのは楽古川。以前にも、アメマスを釣ったことのある川だ。

午後1時過ぎに釣りを開始する。最初は、橋の下の少し上流寄りで、川の感触を確かめた。その後、下流の海に近い場所に移動した。最初にヒットしたのは、ニジマスだった。海に近いところで釣れたのは、少し意外だった。

「音別川―楽古川」 写真1

その後、また少し上流に移動して、キャストを続ける。午後2時15分頃だったろうか、ふと糸が引いた。引き寄せると、アメマスだった。

「音別川―楽古川」 写真2

型は小さかったが、釣れたことにホッとした。すぐに同型の2匹目が釣れ、2時半頃、またヒットした。今度のは、引きが強い。前の2匹よりも、大型だ。焦らず、徐々に、魚をこちらに寄せる。何度か、川面を跳ねながら、魚が手元にやって来た。計測すると65センチ。まずまずの型だ。やはり嬉しい。

「音別川―楽古川」 写真3

リリースして5分もしないうちに、またヒット。今度は50センチだった。その後は、小型ばかりだったが、まずまず好調で、午後3時45分頃に納竿。最初のニジマスが1匹ヒットした後、2時間ほどの間に、アメマスが9匹という釣果だった。以前、この川で釣りをした時には、一番大きくて50センチくらいだったから、この川の持つポテンシャルの高さを、改めて実感した。水がまだ少ない状況で、あれだけ釣れたのだから、水量が増えれば、魚も遡上しやすくなり、もっと大型が望める可能性もありそうだ。

楽古川を後にして、新ひだか町方面に向かう。途中、浦河町のまさご湯(銭湯大人420円、家族風呂大人1人500円)で1日の垢を落とし、新ひだか町の「赤ひげ」で夕食。この日は飲食店を巡るスタンプラリーのようなイベントが行われており、街に人が溢れていた。その日は隣の新冠町の「道の駅 サラブレッドロード新冠」で、車中泊をした。

《 北海道最終日 》

明けて、北海道最終日。コインランドリーで洗濯をしている間に、墓参りを済ませる。その後、新冠川で竿を出してみた。小さなアメマスを1度バラしただけで、反応が薄い。かなり雨も降ってきたし、早々に諦めた。その後、新ひだか町の国道沿いにある比較的新しいラーメン店でラーメンを食べ、釣り具屋をのぞいた後、苫小牧に向けて出発した。

夕方には、大洗行きのフェリーに乗り込む。レストランでビールを飲みながら、今回の釣行を振り返る。北海道も暑さが長引いた上に、雨も少なかった。ゆえに川の水量も少なく、条件的に厳しかった。読みが外れ、北海道に渡る時期を間違えてしまったのは痛かった。北海道で暮らしていれば「どこそこが良い」と聞けば、すぐに車を走らせられるが、茨城にいてはそうもいかない。まあ狙い通りにいつも釣れていたら、面白味もないだろう。こちらの思惑通りにいかないからこそ、いかにも自然を相手にしているという醍醐味があるというものだ。そう自分に言い聞かせて、杯を重ねた。

Tackle Data.(使用タックル)
  • ロッド  フェンウィック・ワールドクラススーパーフューチョ 8f9in
  • リール  ABUカーディナル4X
  • ライン  バリバスゲーム14LB
  • ルアー  ホンナミスピリット・マキリ
          スミス・Dコンタクト85
          ABUトビー18gr
          ABUアトム25gr

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